平成30年度・令和元年度川崎市社会教育委員会議図書館専門部会研究活動報告書 『図書館における読書推進の現状と課題』〜読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)を踏まえて〜 令和2年(2020年)3月 川崎市社会教育委員会議図書館専門部会 令和2年3月31日 川崎市社会教育委員 様 川崎市社会教育委員会議図書館専門部会 部会長 青 柳 英 治 副部会長 吉 田 武 平成30年度・令和元年度 川崎市社会教育委員会議図書館専門部会研究活動報告について 標記図書館専門部会は、川崎市立図書館の円滑な運営を図るために平成30年5月1日に社会教育委員会議の専門部会として設置され、概ね2年間の任期中に川崎市立図書館(以下「図書館」という)のあり方について専門的な見地か ら研究協議を重ね、次のとおり研究の成果をまとめましたので報告します。 今期の図書館専門部会では、平成30年3月に策定された「読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)」を基本に、市立図書館での読書普及の取組みのあり方や図書館利用の今日的課題について調査、研究、協議を重ね、 本研究活動報告書としてまとめました。 これからの社会教育行政及び図書館運営に本報告書が活かされることを期待いたします。 委員構成(五十音順) 青柳 英治(部会長)、大津 裕一、鈴木 穆、千 錫烈、西田 展子、 平木 薫、吉田 武(副部会長)、吉葉 清子、渡部 康夫、渡邊 由紀江 目次 1 はじめに 1ページ 2 読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)における図書館の役割 2ページ (1)基本方針 2ページ (2)「読書活動推進計画における図書館の役割 2ページ (3)図書館における具体的な方策 3ページ 3 専門部会での研究の経過と論議 4ページ (1)乳幼児から小学生の読書推進と図書館サービスのあり方 4ページ (2)ティーンエイジャーの読書推進と図書館サービスのあり方 6ページ ア ティーンエイジャーと読書について イ ティーンエイジャーへの読書支援と図書館 (3)地域ニーズと各館サービス 9ページ 4 図書館における子どもの読書推進 11ページ 5 おわりに 14ページ 【参考資料】 資料1 子どもの読書の有効性15ページ 資料2 各図書館の取組み23ページ 【巻末資料】 (1) 平成30年度・令和元年度審議経過31ページ (2) 平成30年度・令和元年度川崎市社会教育委員会議図書館専門部会委員名簿32ページ 1 はじめに 川崎市社会教育委員会議図書館専門部会(以下「図書館専門部会」という)は、前身である川崎市立図書館協議会を引継ぎ、川崎市社会教育委員会議の専門部会として設置されている。 第1期は平成28年度からの2年間であり、本図書館専門部会は第2期となる。 第1期では現在の図書館運営の理論的支柱になっている「7つの運営理念」のアップデートと「高齢者サービス」のあり方が研究のテーマであったが、今期の図書館専門部会では、「子ども」をキーワードに、各委員の体験や専門的見地も踏まえてテーマを決めていくこととした。 川崎市では、平成16年に「読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画」を策定し、家庭、学校、地域(図書館等)における子どもの読書活動の推進を行ってきたが、平成30年3月には「読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)」(以下「読書活動推進計画」という)が策定され、より一層の子どもの読書活動の推進が求められている。 図書館としても、この「読書活動推進計画」を実現していくために、いままでの活動を踏まえて、特に「読書離れ、図書館離れ」が顕著となっているティーンエイジャー(概ね13歳から19歳、小学校高学年から高校生)への取組みをどのように推進していくかを模索していたこともあり、図書館専門部会では、図書館が「読書活動推進計画」の実現に向けて活動していくにあたり、ティーンエイジャーの読書の取組みや図書館利用の実態なども含めて、「子ども」の読書推進のあり方を研究の中心テーマとすることとした。 平成30年度・令和元年度川崎市社会教育委員会議図書館専門部会研究テーマ『図書館における読書推進の現状と課題』〜読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)を踏まえて〜具体的には、「乳幼児」からティーンエイジャーの読書推進のあり方について、年齢・年代別、地域別にそれぞれの課題や取組みを中心に専門部会として研究、議論を進めた。 2 「読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)」における図書館の役割 今期の研究テーマにおいて、川崎市における乳幼児からティーンエイジャーの読書推進を考えていくには、平成30年に制定された「読書活動推進計画」を踏まえる必要がある。 今後、検討を進めていくために、「読書活動推進計画」の概要について図書館専門部会として確認を行った。 〜「読書活動推進計画」の基本方針と図書館の役割について〜子どもたちの読書活動は、言葉や知識を学び、表現力や創造力を豊かにし、夢や希望、人生をより豊かに生きていくために欠かせないものである。 川崎市では、平成12年の「子ども読書年」を契機に「読書のまち・かわさき」事業を推進し、現在までに子どもの読書活動推進計画を第3次まで展開している。 「読書活動推進計画」の概要と図書館の役割、取組みの方向性は次のとおりである。 (1)基本方針 子どもの読書習慣を形成するには、子どもの読書活動の意義や重要性について、市民の理解と関心を深めるとともに、乳幼児期から読書に親しめるような環境づくりに配慮することが必要である。そのために「家庭」・「地域」・「学校」において、子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高め、進んで読書を行う態度を養い、読書習慣を身につけることができるように努めていく。 さらに読書活動推進の担い手を育てることも重要である。 このために、家庭、地域、学校それぞれにおける読書活動の推進及び啓発活動を実施するとしている。 (2)「読書活動推進計画」における図書館の役割 図書館では、「地域における読書活動の推進」に向け、0歳児が絵本と出会い、言葉を学び、感受性を育むところから始まり、やがて青少年になったときには、自らが選書し、充実した読書活動が行えるように、継続した読書活動への支援を基本としている。 特にニーズが高い0歳児からの読書活動の推進と読書離れの傾向にある中学生・高校生等ティーンエイジャーと呼ばれる層の読書習慣の確立に重点を置き、施策を展開するとしている。 図書館は、豊富な図書資料の中から誰もが自分の読みたい本を自由に選択し、読書の楽しさと喜びを知ることができる場所であり、保護者にとっては子どもに与えたい本の選択や読書について相談できる場所である。さらに来館する子どもや保護者をサポートするだけでなく、図書館を利用していない、利用できない子どもや保護者に向けても読書の情報を伝えていくことも大切であるとされている。 (3)図書館における具体的な方策 ア 施設・設備・図書館資料の充実 児童担当職員により魅力的で多彩な本の収集整備をしている。児童書エリアや特集本のコーナーを設けるなど子どもが興味を持ち、本を手に取り易い工夫をするほか、読書離れの傾向にあるティーンズへの配慮や地理的に来館できない子どもへの自動車文庫での読書支援も行う。 イ おはなし会・展示会などの各種行事の開催 子どもの発達段階にあわせたおはなし会を実施している。特にニーズの高い0歳から1歳児のおはなし会では、読み聞かせの意義や家庭での読み聞かせの方法なども伝え、家庭での読書のサポートも行う。また、ティーンズが楽しめるようなイベントやおはなし会も工夫して実施する。 ウ 子どもへの選書支援 発達段階にあわせた「絵本リスト」や乳幼児向け「えほんだいすき」などの資料を作成、配布するとともに、来館できない子どもやティーンズに向け、図書館ホームページからも同様の資料が見られるように、情報配信していく。 エ 専門的職員の配置・ボランティア活動支援 子どもに的確な資料を提供できるように、図書館職員は専門的な研修を積極的に受け、また講師として専門知識を提供するなどの活動により、読書活動に関わる市民ボランティアの学習支援等を行う。 オ 学校との連携 学校図書館担当教諭、総括学校司書、学校司書、学校図書館ボランティアとの連携を図り、団体貸出、総合的な学習支援、図書館での職場体験学習の実施、学校図書館研修への講師派遣などを通じて協力し、読書活動を推進する。 カ 関係機関・団体等との連携・協力 地域の保育園、幼稚園の他、家庭文庫等との連携や各区の子育て支援への事業協力等を通じ、子ども読書習慣形成の支援を行う。 キ 外国につながりのある子どもや帰国児童・生徒、支援が必要な子ども等への読書活動 英語をはじめ韓国語や中国語など多言語に対応した図書を収集し、外国語図書のコーナーを整備する。また大活字本や布の絵本などにより、読書活動に支援が必要な子どもへのサポート、支援を行う。 ク 県立図書館や県内公立図書館との連携 県内公立図書館のネットワークを活用し、資料の提供や、読書活動の情報交換などを行う。 この他に啓発活動としては、「かわさき読書の日を中心とした子どもの読書活動の推進」があり、図書館では様々な読書関連事業を展開するとされている。 3 専門部会での研究の経過と論議 今期のテーマに基づき、「読書活動推進計画」を踏まえて、図書館における子どもの読書活動について、年齢別や地域、各館別サービスなどの観点から研究、論議を行った。それぞれの研究経過や意見等は次のとおりである。 (1) 乳幼児から小学生の読書推進と図書館サービスのあり方について ア 子どもの読書状況(とりまく環境) ・ 今の親は絵本に対する関心がほとんどない。親に関心を持ってもらうためには、まず子どもたちが絵本やおはなしに関心を持たなければならないのではないか。0歳の子どもでもハイハイしながらでも読んで欲しいと選んでくることある。小さいうちから絵本の読み聞かせをやっていると、本を好きになっていく。 ・ 図書館でのおはなし会には乳幼児はよく来るけれども、学年が上がるにつれて足が遠のく傾向がある。習い事や塾通いが始まり図書館に来られないという理由や、安全面から親としては子どもを一人で図書館に行かせることができないという理由もある。 ・ 子どもは非常にハードな生活を送っているため、本を読むことより先に、まずリラックスすることが必要になっていると思われる。図書館に学習センターと読書センターとしての機能があるが、今の子どもたちは読書センターとしての利用ではなく、宿題や授業の課題をするために利用する学習センターとしての利用が多くなっている。 ・ 小学校では子どもたちに手元に本がある生活をさせたいと思っている。週に1回の読書タイムやおはなし会の方に来ていただく機会はなくせないと考える。学校司書、司書教諭と先生方とも連携して、本の楽しさを知らせていきたい。読書の推進には学校図書館と市立図書館の連携が大切である。 ・ 学校の先生が本好きだと、子どもたちはすごく読むようになる。子どもたちにとって本のおもしろさを教えてくれる大人が周りにいるかはとても大きい。 ・ 子ども全体ではなく一人ひとりで見るとそれほど本離れしていないのではないか。今でも読む子は読んでいる。 ・ 保護者や修理ボランティアなど大人が、本を大事にする姿を子どもが見ることによって、子どもは本を大事にするようになる。 ・ 子どもが行きたいと思っても親が忙しければ図書館に連れていってはもらえない。子どもの貧困などの問題も社会全体で取り組むべきものであり簡単には解決できない課題であるが、図書館として何ができるかを考える必要がある。 イ 図書館での取り組み ・ 大きなショッピングセンターなどで出前おはなし会をやれば、そこに来ている子ども連れの親子を取り込むことができる。 ・ 予算の問題もあるが、ブックスタートは乳幼児に効果がある。図書館は社会教育の場なので、読書以外に勉強しに来るのもよいし、蔵書にマンガを入れるのも検討の余地はあると思う。 ウ 周知 ・ 図書館側は読書推進活動を非常によくやっていると思うが、それにもかかわらず、図書館活動を知らないという市民が沢山いるのはなぜなのかと思う。 ・ 効果的なPRの問題はある。おはなし会のチラシなどを近くの学校へ配布するなどの取組みもよい。 ・ 地域の情報誌などでイベント告知すると参加者がとても多い。自治体の「だより」などは若いお母さんはまず見ない。もう少しPRを工夫すればよいと思う。 ・ 図書館のイベントに加え市民向け公開講座も網羅した一覧表などがあるとよい。 子どもに限らず全体の読書推進の観点から関係機関を含めてリスト化することも有効な方法と思う。 ○まとめ(乳幼児から小学生) 子どもをとりまく環境は様々であり、保護者や大人の読書への関わり方により、乳幼児からの読書習慣は大きく影響されると考える。まず図書館としては保護者や大人に対して読書の大切さや有効性をどれだけ認識してもらうかが課題である。 そのためにも図書館の行う様々な読書普及関連のイベントを、図書館に関心がなかったり、来館しない人々にも周知する必要がある。図書館内だけにとどまらず、人出の多い場所での「出前おはなし会」や、図書館に来館せずともイベント情報が得られる仕組みを工夫するなど、さらなる周知の方法も検討していくべきである。 (2) ティーンエイジャーの読書推進と図書館サービスのあり方について ア ティーンエイジャーと読書について ※『図書館雑誌』(2018年12月号)に本専門部会 千 錫烈 委員による「子どもの読書の有効性―「読解力」「学力」「非認知スキル」の観点から―」が紹介されている。 専門部会としてもティーンエイジャーの読書を考える上で重要な視点の一つと考えられるので、研究・協議に先立ち、千委員から読書の有効性や効用について報告、説明を受けた。 ◎読書の効用、学力等との関係性について (参考資料1参照) ・ 子どもの読書に期待される効果として、心理的側面では心の成長や癒しが挙げられ、学力面では、学力の向上、学習意欲の向上が期待できる。 ・ 具体的な読書の効果としては国際的学力調査の結果からも分析がされている。 ・ 子どもの読書には「娯楽的読書」と「研究・調査的な読書」があるが、「娯楽的読書」であっても読解力は向上する。 ・ 読書の習慣がある生徒は、読書をしない生徒に比べて読解力が高く、土日に長時間読書するよりも、「朝読書」のように少ない時間でも毎日読む方が読解力の向上に効果的である。 ・ 図書館を利用する生徒は、利用していない生徒に比べ読解力が高い。 ・ 子どもの読書習慣の要因として親の行動が重要であるとの調査もある。 ・ 保護者と子どもの学力についての関係も調査されており、家庭の所得、親の学歴と子どもの学力には一定程度の影響が認められる。 ・ 子どもの頃の読書活動が多い大人ほど、「未来志向」「社会性」「意欲・関心」「文化的作法・教養」「市民性」といった非認知スキル全てにおいて高い。 ・ 2013年の「子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究」では、子ども時代の読書経験が、大人になってからの意欲や能力に大きな影響を及ぼしており、読書好きになるかどうかは、幼児期から中学生までの読書量が影響していると結論づけている。(以上、千委員からの説明、報告) (a) ティーンエイジャーの読書の状況 ・ 文科省の調査結果では、1か月に1冊も本を読まなかった不読者の割合(不読率)は、小学生は5.6%、中学生は15.0%、高校生は50.4%である。 ・ 子どもは休み時間も忙しく、学校図書館にも行けない。また帰宅後は習い事や塾でとても忙しい生活をおくっているというのが実態である。 ・ 読書の効果として、子ども達にどういう良い影響を与えるかが数値化できることにより、学校図書館の利用の重要性がより明らかになると思う。 ・ 最近は情報通信技術(以下「ICT」という)を重視することが多いが、やはり読書は大事だということを知らせていく必要がある。ICTも読書もどちらもバランスよくやっていかなければならない。 ・ 本を読むと人間的にも豊かになり、さらに将来的な年収にも関係する。読書の非常に良い面が数値化されている。どうすればこの有効性を実行できるのかを提言すれば読書離れの問題は解決するのではないかと思う。読書に親しむことの良さを伝えるのに一番いいのは年収に影響を与えるということかもしれない。 ・ 海外で保護者に、読書をすると効果があることを具体的に数字で示したところ、親が読書をすすめるようになったという事例はある。しかし日本では教育をお金に換算することは避ける傾向もあり、直接的に言及することは難しいのではないか。 ・ 読書離れの具体策としては、学校での「朝読書」をきっかけに本に親しむほか、中高生向けのおすすめの本のリスト作成や配布などにより図書館利用のきっかけを作りたい。 ・ 普段から本を目にしているかどうかが大事。リストだけではなく、おすすめの本を学級文庫など、子どもがすぐに手に取れる場所にあった方が効果的である。 ・ 非来館型として電子書籍も1つの手段である。 (b) 図書館での取り組み ・ 読書の効果を様々な角度から検証した今回の調査のように、興味深い読書に関する調査や統計などがあれば、図書館のホームページなどを活用してできるだけ広く学校等にも周知していく。 ・ ティーンエイジャー向けのおすすめ本の収集やコーナーの設置、紹介を積極的に行う。 イ ティーンエイジャーへの読書支援と図書館 (a) 読書支援、読書環境 ・ 中学校の連合文化祭において、本の帯作り、POP作り、本の紹介、しおりの作成など、普段はやれないことを生徒たちが行っている。ある学校では読書通帳を作ってみようと企画している。図書館に足を運んでもらえるような工夫が必要である。 ・ 中学生は時間がないで終わらせるのではなく、子どもたちに、おすすめの本を紹介したPOPをつくって全校に配ったり、自分たちでイベントを企画させたりする機会を持たせることも読書支援になるはずである。 ・ 図書館に行く時間がなくても、本を子どもに届けることが重要。学校では学級文庫を充実させ自由に利用できるようにすることが大切。子どもに読書をすすめるには、先生や図書館職員、大人も本を楽しむということが必要。大人が本を好きであり、大人が本を読む姿を間近かで見たり、大人から読んでもらったなどの体験が本当に大事になる。 ・ 図書館が「かわさき読書100選」やおすすめの本を各学校に長期の団体貸出をする。 ・登下校に必ず通る昇降口などにおすすめの本を置いておけば、本と毎日接する環境が整備でき、子どもの読書推進につながる。 (b) 図書館での取り組み ・ 子どもたち、特にティーンエイジャーが集えるスペースが少ないということはどこの図書館にも言えるが、居場所づくりの確保はこれからの課題である。 ・ 図書館と居場所の議論。社会学では図書館を「第3の居場所」として学校でも家庭でもない施設として捉えることがあり、そのような観点から足を向かわせる、仕組みのようなものがうまく機能することが重要と思う。第1段階として図書館に実際に向かわせる、第2段階として図書館に来たらこんな面白い本がある、こんな本を読んでみたいと思わせる、そのようなきっかけや工夫も考えたい。 ・ 図書館において、本好きの子を集めて、サークルのようなものを作り、そこでアイデアを出してもらい、本の紹介、図書館職員のおすすめの本、図書館で実施していることをまとめる。それを駅や電車の中吊り、バス停など目につくところに置くなども考えられる。 ・ 広報という観点からいろいろな「仕掛け」を作っていく、POPや帯を作ることも読書活動の一環となる。 ・ 武蔵中原駅に図書の返却ボックスができたが、ただ返却するだけではなく、図書館への行き方や開館時間などの情報もわかるようにしたい。新着情報のチラシなども置くなど、図書館の広報の場としての活用も考えられる。 ・ 川崎市はフロンターレと読書を結びつけた事業を展開しているが、とてもユニークな試みだと思う。ティーンエイジャーに向けた読書の取り組みとしても推進してほしい。 ・ 各図書館で興味のありそうな中高生に声をかけて、図書館離れを食い止めるにはどうしたらよいか、読書推進のためにはどうしたらいいか、図書館を知ってもらうにはどうしたらいいかなどについて、会議の場所を作り、子どもたちのアイデアを出させることはできないか。 ○ まとめ(ティーンエイジャー) ティーンエイジャーになると時間的制約も増え、読書離れ、図書館離れの傾向が高くなるが、必ずしも読書習慣がないとは限らず、きっかけや必要があれば図書館の利用も読書もするティーンエイジャーも多い。 重要なのはこの年代以降も読書離れ、図書館離れが続いてしまうということだ。図書館の支援としてはティーンエイジャー向けの本を収集していくことはもちろんの こと、居場所としての図書館のあり方を考えていく必要がある。また同世代が気軽に読書について語り合える環境を増やすことが望ましく、ティーンエイジャーに読書の 効果や楽しさをいかに伝えるかといった工夫や仕組みが重要である。そのためにも、学校との連携やティーンエイジャーの声を聞くなどの取り組みをさらに充実させる必要がある。 (3)地域ニーズと各館のサービス ア 地域ニーズとこれからの図書館 ・ 歩いていけるところに地域密着型の図書館が欲しい。 ・ 人々の移動する「動線」を考えると、中原図書館のように駅に近いと利用頻度が非常に高いと推測できる。鷺沼駅前への移転が計画されている宮前図書館の場合も「動線」という視点から考えると駅前への移転は利用向上に直結すると考える。 ・ 「動線」については、駅から遠くてもシャトルバスが出ていれば図書館の利用は増えると思う。駅に近いという立地は魅力だが、図書館に気軽に行けるという交通機関があれば、人は集まってくる。 ・ 図書館だけでなく複合型にして、講座を開いたり、市民に関心のあるテーマの催しをしたりして、広報もすると、人は集まってくると思う。 ・ 高齢化の進展を考えると来てくださいと言うだけではなく、行きたくても来られない人に対してどのような対応ができるかが大事である。これは子育て世代などにも当てはまる。自動車文庫1 台で市全体のポイントを巡回していることに驚いた。 ・ 図書館側から出向くアウトリーチサービスについては、自動車文庫の他に、希望する図書を家まで届けるサービスを行っている自治体もある。そういったサービスを行うことによって、高齢者に対する読書推進がすすんでいくということは考えられる。 ・ 「老人いこいの家」などに、歳相応という観点から選んだ本を持っていくと借りてくれない。むしろ若者向きの本がいいと言われる。先入観は打ち壊さないと本はすすめられない。 ・ 子どもたちが本を読むとき、将来の自分の姿を考えながら読んでいる。今の自分の生活を見つめながら、新しい世界をどう作ろうかと考えて意欲的に読書すれば、本だけにとらわれず、図書館や生涯学習という大きな枠とつながっていくのではないか。 イ 各館のサービス (参考資料2参照) ・ 各図書館で行われているサービスの説明を聞いて、それぞれ特徴とか特色を捉えてニーズにあった取組みをしていると思う。きめ細かくて、いろいろなことを考えて実施しており、努力も伝わるが、やはり広報、周知にさらに工夫が必要と思う。図書館だよりを小中高の学校図書館や駅の掲示板に掲示したらどうか。 ・ おはなし会と救命講習を合わせて実施している図書館からも説明があったが、子育て支援策から入って、うまく読書推進につなげるということも可能ではないか。 ・ 図書館では毎回、工夫された展示がされており、職員が頑張っていると感じるが、いつ何をしたということがわかるような、掲示スペースや掲示板がないので、もっとPRして欲しい。 ・ 地域の人も掲示板を利用できるようなシステムを作ることによって双方向の交流が生まれるのではないかと思う。 ○まとめ(地域と図書館) 川崎市は南北に細長く、それぞれの地域でニーズや利用者層が異なっている。各図書館では、地域の実情に合わせた取組みを行っているが、社会的状況の変化も踏まえて、さらにきめ細かい図書館サービスが求められる。 特に館数が限られている現状を考えると、自動車文庫だけではなく様々なアウトリーチサービスを活用することにより読書普及の充実を図ることができるのではないか。 これからの図書館を考えていくには利便性の向上や地域のニーズを的確に見極め、広い視点からの読書推進を図ることが大切である。 4 図書館における子どもの読書推進 これまでの専門部会の研究、協議を通じて、子どもの読書推進を検討するにあたり重要となる6つの視点を見出すことができた。 視点@ 「大人の姿勢」 子どもを読書に向かわせるには、「大人の姿勢」がとても大切だ。乳幼児期から本に親しむには読み聞かせなどの体験が重要であり、家庭や保育園・図書館等での親や大 人の果たす役割は大きい。また学校では先生や図書ボランティアの果たす役割が大きくなる。 家庭に蔵書がたくさんあって、子どもに読書をすすめたり、図書館に子どもを連れて行ったり、読後の感想を子どもと話し合ったりすると、子どもは読書に向かうよう になると言われている。また、親が本を大事に扱う姿や、ボランティアの方が本を修理してくれる姿を実際に見て育つと子どもは本を大事に扱うようになる。 学校では先生自身が本好きかも影響する。先生にすすめられた本は子どもにとってとても印象的で、読んでみようかという気になる。また厳しい時間的制約の中でも、 教室に本を置き身近にあることでいつでも手に取れるようにし、もっと本を読みたい子には「市立図書館にも行ってみよう」と声掛けし、「図書館へつなぐ働きかけ」を行うことも、子どもを読書に向かわせる推進力となるはずである。 取組例 ●大人や保護者に対してより読書の楽しさや図書館への理解を高めてもらうための「親子で楽しむおはなし会」、「本の修理体験講座」 視点A 「読書の自由度」 子どもを読書に親しませるには、「自由度を高める」ことが有効である。読書には学習・レポートのための「調査的読書」とライトノベルやケータイ小説などに代表され る「娯楽的読書」のニ面性があると大人は分析するが、子どもの中では両者の区別はない。宿題や課題が出されたから読むのではなく、子どもに自由に選書させることが 重要である。子どもが選書に迷ったときに大人や図書館が手助けしたらよい。読み始めてつまらないと思ったら途中でやめる自由も子どもに委ねるべきである。そういう 自然な読書をやっていれば、読書が子どもの生活の一部となり浸透していくのではないかと思われる。 取組例 ●子どもが自分で本を選ぶ楽しさを味わうための「本の探し方体験講座」 ●子どもが図書館資料の選定に関われる「アンケート」や「選書体験」 視点B 「学校における取組みとおすすめ本リスト」 学校での取組みとして「朝読書」がある。週末にまとめて長時間読書するよりも、短い時間でも毎日継続すると学力向上によりつながるといった調査結果も出ている。 子どもに読書の習慣を持ってもらうためにも有効な取組みである。 また図書館や学校図書館では、「えほんだいすき」「かわさき読書100選」などのおすすめ本をリスト化しているが、リストだけではなく、子どもの目につくところに 本を置くのがよいという意見もあった。 取組例 ●学校図書館の選書に児童、生徒の意見を取り入れられる機会 ●学校司書など、子どもと本とのつながりを支援する人材の確保 視点C 「家庭環境と時間的制約」 子どもの読書推進の課題として、親にも子にもゆとりがないことが挙げられる。全国学力状況調査で成績が全国平均より低かった学校では、地域的に家庭がとても忙し く、読書への関心も低い家庭が多く見られる傾向にあった。幼児教育の現場でも、絵本に関心がないお母さんが多く、子どもから親に働きかけて親の意識を変えていかな ければならないのではという意見も出た。また保護者が忙しいと子どもが行きたくても図書館には連れて行ってもらえない状況もあるなど、社会全体の問題としてより複雑であるとの認識もされた。 さらに子どもは学校においては委員会等のため休み時間でも学校図書館に行けないほど忙しく、学校が終わってからも習い事や塾で忙しい生活を送っている。本を読むという姿勢になる前にリラックスすることがまず必要といった状況が生じている。 読書をすると、学力(認知スキル)のみならず、社会に出てから必要となる非認知スキルも向上するという調査結果も出ているが、本を読むからだけではなく、ゆとり があるからこそ友達を思いやることが自然にできるようになるのではないかという意見もあった。 取組例 ●乳幼児期からの読み聞かせの大切さを知ってもらうために、「新米パパ・ママの読み聞かせ講座」 ●読書の効果や重要性を誰もが理解、認識できる本や情報の「リスト」化 視点D 「広報・周知方法」 図書館への提言として、従来型のPR方法を変えていく必要性がある。図書館は様々なイベントや取組をしているが、そのことを知らない人がいる。市の広報誌では なく、民間の広報誌に記事を載せることで、市の広報誌を読まない人にも情報が伝わるのではないか。また周知したいことをまとめて、駅や中吊り、バス停など目のつく ところに掲示するなどの工夫が必要と思う。 また、市の主要なショッピングセンターなどで図書館を知ってもらうために、「出前おはなし会」などを実施するなど、新たな広報・周知方法を検討すべきである。 さらには、興味のある子どもたちを取り込んで、例えば図書館離れを防ぐにはどうすればよいかなどを考えてもらい、アイデアを出してもらうのもよい。子どもたちの 持つエネルギーは素晴らしい。本を読むだけでなく、POP作成や帯作成などは読書活動の一環になるはずである。 取組例 ●学校の「PTA広報誌」などを活用した読書や図書館に関心のない親や大人への啓蒙、啓発 ●出前おはなし会など「まちに飛び出す図書館」の積極的な取組み ●ティーンエイジャーにも関心をひく「ビブリオバトル」などの実施 ●子どもやティーンエイジャー自らが運営する「図書館イベント」 視点E 「図書館の基本」 川崎市の各図書館では基本的なサービスはきちんと保ちながら、特色のある活動に取り組んでいる。図書館利用の減少は全国的な傾向なので、利用者数や貸出数が増え た、減った、で一喜一憂せずに、少し長期的な視点に立って図書館の基本を大切に考え、安定し継続したサービスを行っていくことが重要である。 取組例 ●子どもから高齢者まで、利用しやすく、親しみやすい図書館運営 ●「ボランティアとの協働」など市民や利用者とともに育つ図書館 5 おわりに 近年、全国的に図書館の利用者数や貸出数が減少傾向にあると言われており、人口が増加している川崎市の図書館においても、利用者数や貸出数については減少傾向が 見受けられる。さらにティーンエイジャーの不読率は全国的に高い数値が示されている。 平成30年度・令和元年度川崎市社会教育委員会議図書館専門部会としては、これらの状況を受けて、これからの図書館利用を担う「子ども」たちの読書推進のあり方について各委員の専門的な立場からの視点で議論し研究を進めた。 子どもの読書活動は図書館だけで行えるものではなく、家庭や学校とも連携して長い時間をかけて取り組んでいかなければならない課題である。 市では学校や図書館で「読書のまち・かわさき」事業に取り組んでおり、「読書のまち・かわさき子ども読書活動推進計画(第3次)」も策定されている。この計画におけ る図書館の位置づけを基本にしつつ、今期の専門部会で研究した内容、特に「4 図書館における子どもの読書推進」の6つの視点を踏まえて、これからの子どもの読書 活動推進にどのように取り入れていけるかを図書館として検討し、実施していただきたい。 これらの中には、短期的にできるもの、長期的視点で実施すべきものなど多様だが、これからの図書館活動の一助として、子どもの読書推進及び図書館利用の向上につながることを希望している。 ○川崎区には地区館の川崎図書館と、大師地区に大師分館、田島地区に田島分館があります。 川崎図書館 大師分館 田島分館 設立 平成7(1995)年4 月 平成7(1995)年11 月 平成4 年10 月 延床面積 1,179 u 265 u 203 u 蔵書数 182,190(うち児童39,902)冊 48,730(同17,453)冊 47,867(同20,937)冊 収集分担担当 0門(総記) (川崎の図書館 川崎市立図書館活動報告書平成30(2018)年度) ○川崎図書館は川崎駅前のビル内に位置し通勤・通学や買い物等の際にも便利に利用できる図書館です。平成30 年2 月には北口通路開通により川崎駅と直結になりました。 ○韓国・朝鮮コーナー(3,774 冊 うち韓国・朝鮮語図書2,094 冊)の設置 ‥ ハングルで書かれた本、朝鮮半島や在日韓国・朝鮮人の歴史や文化に関する本のコーナーがあります。また、隣接した棚に英語図書2,503 冊のほか、中国語図書1,017 冊を所蔵しています。 ○ティーンズコーナー(3,300 冊)の設置 ‥ 中学・高校生などティーンズ向けに書かれた本をコーナー化して別置しています。 ○コンパクト・ディスク(CD)(5,365 点)の貸出し(市内で3 館) ‥ クラシック、ジャズ、ポピュラー音楽、落語、朗読、効果音等のCD の所蔵があります。 ○区役所や他部署との連携展示 ‥ 廊下の壁面を事業やイベントの広報場所として提供し同時に図書館資料を並べて連携展示を行っています。(区役所地域振興課、地域ケア振興課、市民文化局等) ○川崎区誌研究会との協働事業での展示会実施(アートガーデン) ‥ 毎年1 月〜2 月にかけての一週間程度、地域に関する広報展示を地域の歴史を研究している区誌研究会と協働で開催しています。 ○川崎図書館・大師分館・田島分館3 館合同おはなしキャラバン ‥ 各館のおはなしボランティアが協力して大きなおはなし会を年に一回行っています。 利用の推移 川崎図書館 大師分館 田島分館H27(2015)とH30(2018)の比較 2015 年度 2018 年度 2015 年度 2018 年度 2015 年度 2018 年度 貸 出 人 数 247,942 268,099 43,394 44,445 35,514 32,076 うち児童生徒 20,625 25,074 7,371 8,585 5,034 4,534 貸 出 冊 数 570,249 586,570 126,437 117,654 105,102 90,237 うち児童書 145,787 172,359 59,295 55,668 40,391 35,528 CD・カセット 31,810 29,522 568 594 923 894 入 館 者 数 380,356 392,119 87,668 75,687 58,954 51,628 【参考資料2】各図書館の取組み 【図書館概要】 ○幸区には、地区館のほか、日吉地区に日吉分館があります。 項目 幸図書館(地区館) 幸図書館日吉分館 開館日 昭和55(1980)年7月 平成15(2003)年7月 構 造 鉄筋コンクリート造、1階・2階部分 (幸市民館との合築) 鉄筋コンクリート造・3階部分 (市民館分館・日吉出張所・健康ステーションとの合築) 延床面積 886u 1階=開架室(一般書コーナー・児童書コーナー)、 参考図書室、対面朗読室、作業室、書庫 *閲覧席46席・新聞等閲覧席8席 2階=談話コーナー、書庫 245u 3階=開架室(一般書コーナー・児童書コーナー)、 児童室、作業室 *閲覧席13席 開館時間 月曜〜金曜 =9:30〜19:00 土曜・日曜・祝休日=9:30〜17:00 月曜〜金曜 =10:00〜18:00 土曜・日曜・祝休日=10:00〜17:00 休館日 毎月第3月曜日(祝休日にあたる場合は開館し、その翌日を休館とする)・年末年始・蔵書点検・その他 蔵 書 145,302冊 (内、児童図書41,475冊) 開架冊数=87,763冊 40,561冊 (内、児童図書18,610冊) 開架冊数=38,981冊 (資料:「平成30年度活動報告書」) ○幸図書館は、市民館との複合施設として住宅街の中に立地しており、周辺には区役所、スポーツセンター、健康福祉プラザ、こども文化センター等の行政機関・施設があることから、区民の生涯学習の拠点となるとともに、親子、高齢者等地域住民の利用が多い地域密着型の図書館です。 ○最寄りの駅からは遠く交通の便が良くないため、区役所と共有の駐車場、駐輪場を設けており、親子連れや子どもたちが気軽に利用しやすい環境が整っています。 ○市立図書館の中では、規模が小さく、蔵書数も少ないが、施設環境としては窓が大きく自然光が入るため明るいことや閲覧席からは竹林が望める等、落ち着いた雰囲気をもつ図書館です。 ○徒歩圏内(20分程度)に小学校、中学校が多数あることから、図書館見学、職場体験、団体貸出など学校連携が盛んにおこなわれ、児童生徒の読書活動への興味・関心を高めるきっかけとなっています。また、保育園、ゆうゆう広場等、地域団体へ団体貸出も盛んにおこなわれています。 ○市立図書館の活用促進に向けて幸区学校図書館・市立図書館連携会議を実施しています。特に読書週間にあわせて各学校図書ボランティアの活動紹介ポスターを児童書コーナーに展示して、児童生徒とその保護者をはじめ未就学児童の保護者に学校図書室や図書ボランティア活動への関心を高め、学校図書室の利用や子どもたちの読書活動の促進を図っています。 【各種事業の取組】 ○資料の収集・保存 「知の拠点」として多種・多様な図書館資料を安定的・継続的に収集・保存しています。特に地域図書館として地域課題解決に欠かせない郷土・行政資料の積極的な収集・保存に努めています。また、除籍した資料については、リユース本として市民に無償提供するなど有効活用を図っています。 ○関連情報の提供とレファレンスの充実 市民ニーズに適切に応える資料や情報を提供するとともに、地域の課題等、市民の広範な課題解決・調査研究を支援しています。また、夏休み期間中には、子どもたちの自由研究の参考となる資料の紹介・提供や相談等に対応しています。館内に様々なテーマを取り上げた「特集コーナー」を年間通して設けており、市民の読書への興味・関心を 高まるよう情報提供に努めています。 平成31年度は「日本古典文学」、「空を読む」、「オリンピック」、「エコフェア関連」、「防災」、「金原瑞人」、「色・イロ・いろいろ」、「岡本かの子」、「健康長寿」や子どもたちを対象に「ねこ」、「雨」、「自由研究に役立つ本」、「おじいちゃん・おばあちゃん」、「おいしい食べ物」、「おばけ」、「クリスマス」、「子どもの権利」、等の特集を企画・展示するとともに、市内図書館巡回展として「岡本かの子の文学」、を展示して読書活動の推進を図りました。 ○多様な市民サービスの提供 ライフステージに応じたサービスを提供するために、子育て世代への読書支援として各種おはなし会等の実施やブックリストの作成、読書離れといわれている中高生への対応としてティーンズコーナーの設置、障が い者への対応として対面朗読室の設置や郵送サービス、そのほか大人のためのおはなし会や朗読会等を実施する等、多様な市民サービスに努めています。 ○他機関・学校等との連携 保育園をはじめゆうゆう広場や地域子育てグループへの図書資料を団体貸出する等、子どもの読書環境整備、支援に取り組んでいます。 また、今年行政機関が周辺にある地域の特性をいかして、区事業にも参画し、図書館の利用促進を図っています。平成31(令和元)年度は、市民館事業に関連する資料の展示、企画課「エコフェア」でロール芯を使ったエンピツたてづくり・リユース本配布、区みまもり支援センターとの連携で講演会(アンガーマネジメント・Wケア・認知症予防)に関する図書の紹介、2月には「子育てフェア」でのリユース本の配布・特集コーナー設置等を予定しています。 また、学校との連携では、連携会議の実施、授業支援図書セット等の団体貸出、図書館見学、職場体験を通して子どもたちの図書館への関心を高めるとともに、読書活動の促進に努めています。 ○ボランティアとの協働・連携事業を実施するにあたり、ボランティアとのかかわりは欠かせないものです。主な活動グループとしては、 @ (幸・日吉)「幸えほんの会」 エプロンおばさんの絵本の時間(毎週第2、4火曜日午前)、○月のおはなし会(年4回)、大きなおはなし会(各年2回、夏・冬)、 日吉分館絵本の読み聞かせ(毎週第2・4月曜日午前、第2・4金曜日他不定期午後) A (幸)「語りの会 ストーリーテリング幸」 ようこそ!こわいおはなしの世界へ(年1回、夏)、大人のためのおはなし会(年2回) B (幸・日吉)「朗読グループ レザミ」 大人のための朗読会(各年1回) C (幸)「幸国際子育てクラブ トントン」 おはなしワールド(年1回) D (日吉)「語りの会日吉」ストーリーテリング(毎月1回) おはなし会(年2回、夏・秋) 大人のための語り(年1回) E (日吉)「やまぶきの会」 気軽に聴ける朗読会(年1回)が日々、図書館で活発な活動を行っています。 ★建物について 住 所 〒211-0063 川崎市中原区小杉町3-1301 電話 044-722-4932 開 館 2013(平成25)年 4月移転 (1960(昭和35)年 4月設立) 開館時間 月〜金 9:30〜21:00 土・日・祝休日 9:30〜17:00 延床面積 4,497平方メートル 5・6 階 (地下1階、地上3〜4階一部) 休館日 第3月曜日、年末年始、特別整理期間など (開館日数:340日程度) 閲覧席 201席(一般、社会人、ティーンズ、児童、時間管理席) 施 設 自動予約棚(約9 千冊) 自動書庫(約28 万冊) カッコ内は収納可能冊数 ★資料について (平成30年度統計から) 蔵書数 約40万3千冊 (うち児童書:約6万6千冊) 開架資料 約25万2千冊 (全体の約63%) 雑誌・新聞の種類 雑誌 317タイトル、新聞 35種類 30年度に入った資料 約1万5千点 年間貸出冊数 約174万冊(うち児童書:約64万冊) 1日平均 5,338冊 ★利用者について (平成30年度統計から) 中原図書館で貸出を行った利用者数 約5万人 (うち児童約7千人) 1日の貸出者数平均) 2,529人 (1年間で延べ82万5千人) 1日の来館者数(平均) 3,491人 (1年間で延べ114万人) 職 員 数 正規職員19人(3係1担当)、 嘱託職員6人 (このほかに約30人の委託従事者が勤務) ★3年間の統計 平成28年度平成29年度平成30年度 貸出冊数1,760,256 1,806,465 1,740,315 うち児童図書603,581 646,566 638,127 うちCD 55,133 54,868 48,745 貸出人数822,329 861,060 824,557 うち児童・生徒108,583 119,386 112,047 予約受付冊数526,924 524,758 515,177 うち児童図書122,911 128,201 129,667 お話し会 開催数73 76 89 お話し会 参加人数1,945 2,080 2,343 団体貸出冊数4,957 4,870 5,901 貸出団体数39 39 42 ★中原図書館の特徴など ○土日祝日の座席利用(開館前に300 人以上並ぶ場合あり) ○ティーンズコーナー(専用席、関連本)の整備 ○パソコン利用可能席の充実 ○時間管理席、インターネット席、データベース専用席をシステム管理 ○レファレンスのための専用カウンター設置 ○多目的室を活用した図書館事業および関連事業の実施 ○季節や時事に合せた特集コーナー(一般、児童) 川崎市立中原図書館について 【図書館概要】 ○高津区には、地区館のほか、高津市民館橘分館との併設の高津図書館橘分館(プラザ橘)があります。 項目 高津図書館(地区館) 高津図書館橘分館 所在地 高津区溝口4−16−3 高津区久末2012−1 設立 昭和12年4月 (昭和63年3月移転) 平成5年10月 延床面積 2,196u 247u 蔵書数 247,742冊 (内児童図書89,800冊) 開架冊数=129,544冊 37,176冊 (内児童図書16,126冊) 開架冊数=34,808冊 閲覧席 148席 15席 (資料:「平成30年度活動報告書」) ○高津図書館は、東急田園都市線高津駅から5分、旧大山街道沿いの公園・溝口緑地の一角に位置しており、隣接地には保育園、地域子育てセンター、小学校があります。高津図書館の特徴としては、蔵書数の約36%となっている児童図書が、他館より豊富であることあげられます。(他館は30%弱) ○高津図書館は、開館以降30数年が経過し老朽化が進んでいるが、長寿命化対策を計画的に進め概ね60年活用することとしており、昨年度はトイレの改修工事、今年度は受変電設備改修工事及びエレベーター撤去新設工事を行っております。 ○図書館見学、職場体験学習といった市立小中学校との連携以外に、地域連携として高津区文化協会主催図書館体験ツアーや子ども大山街道探検クラブ作品展(会場:高津図書館)の開催中に「二子の渡し」(紙芝居)等の地域に関係が深い絵本等の読み聞かせを行う「おはなし会」 も開催しています。また、平成28年度から通年で、近隣にある就労移行支援事業所利用者の社会参加の機会となる実習の受入れを実施しています。 宮前図書館について 【概 要】 ※統計は2019 年3 月末時点 ・ 昭和60 年(1985 年)7 月開館 / 宮前市民館と併設 ・ 床面積 1,448 u ・ 所蔵冊数 244,578 冊(うち児童書80,660 冊) ・ 新聞:15 紙 / 雑誌:118 誌 ・個人貸出者数 年間384,355 人(うち児童・生徒 69,615 人) ・ 個人向けの資料貸出 年間927,897 点 ※ 市内2位 ・団体向けの資料貸出 年間5,285 点 ※ 市内2位 ・ 予約受付件数 年間274,884 点 ※ 市内2位 ・ 来館者数 年間559,779 人 ※ 市内2位 ・ 閲覧席 社会人席6、パソコン席14、一般席54 【サービス】 ・読み物や実用書、各分野の本や絵本、紙芝居、新聞、雑誌、大活字本、辞典類 ・「布の絵本」 ・地域資料や行政情報等の提供 ・ビジネスや学習の支援、レファレンス ・インターネット端末やデータベース情報の提供 / 自動貸出機2 台 ・図書返却ボックス(鷺沼行政サービスコーナー、アリーノ※) ※アリーノでは予約本の受取も可能 ・学校図書館の支援(授業支援セットの貸出、図書館見学、職業体験など) ・おはなし会(乳幼児向け〜小学生向け、大人のおはなし会など) ・フロンターレコーナー ・企画展示コーナー ・障害者サービス(郵送サポート、対面朗読) ・研修やお話会ほか、各種イベントの開催 など ・自動車文庫「たちばな号」 ※宮前図書館が車両の発着基地となっており、現在は川崎区から 麻生区まで、1 台で市内21 か所を巡回している。 【独自の特設コーナー】 ・「子育て支援コーナー、子育て支援情報コーナー」→子育てに役立つ本やチラシ等を児童コーナーの一角に集めて常置している。 ・認知症の人にやさしい小さな本棚 ↓(※)医療、老人福祉、成年後見制度、体験記、高齢者向け紙芝居等、認知症に関する資料を1つの棚に集めるとともに、周辺に地域包括支援センターのチラシや相談窓口の案内、介護の講座や医療機関の情報、福祉施策等、区内の関連情報を集めて提供している。 ※認知症サポーター研修等を通じて現場職員が認知症と思われる方への理解を深めるようにしている。 布の絵本 認知症の人にやさしい 小さな本棚 区内・地域包括 支援センター等 のチラシ類 宮前図書館の外観 たちばな号 多摩図書館の特徴と主な取組み等について 〜多摩区に固有な「水と緑と学びのまち」〜 ★生田緑地の地域資源を活用した取組み、(読み聞かせボランティア協働事業) 宙と緑の科学館と連携した「物語でめぐる星の世界」 (プラネタリウムに映像を映写したおはなし会) ★区内の3大学との連携 明治大学(川崎市民)、専修大学(多摩区民)、日本女子大学(多摩区民18 歳以上女性)の大学図書館の地域開放 〜郷土の歴史を振り返る〜 ★無形文化財(菅獅子舞)の紹介、 地域の稲田郷土史会との連携 菅獅子舞企画展示、 多摩区郷土史入門講座の開催 (多摩区に残る信仰の足跡、多摩川の治水100年の歩み・アミガサ事件・平賀栄治、丸山教etc) 〜地域文化と読書普及〜 ★多摩区文化協会との共催による 読書普及文化講演会の開催 (R1:紺野美沙子、H30:岸本葉子、H29:林望、H28:石坂浩二、H27:山本一力・・・) ★企画展示の充実(月替わり)(H31・R1 実績) 〜資料の分担収集〜 ★分野別 600〜 産業 900〜 文学 ★白書・年鑑 海上保安レポート、漁業白書、通商白書、食糧・農業・農村白書、森林・林業白書 少子化社会白書、貿易統計年鑑 ★雑誌 暮らしの手帳、芸術新聞、婦人の友、文藝春秋 ★新聞 毎日新聞、稲田ニュース、くらしの窓、菅町会ニュース等 ★CD 「平成を振り返る」(4 月)、「理系特集」(5 月)、「ダイエット特集」(6 月)、「夏旅・おいしいもの」(7 月) 「多摩区の歴史や自然」(8 月)、「イギリス特集」(9 月)、「芸術いろいろ」(10 月) 「アニメになった小説」(11 月)、「WE LOVE 宇宙」(12 月)、「小田急線特集」(1月予定) 「毎日映画コンクール」(2 月予定)、「断捨離特集」(3 月予定)、館長のおすすめ本(毎月) 【図書館概要】 ○麻生区には、麻生図書館と、柿生分館があります。 項目 麻生図書館 柿生分館 開館日 昭和60(1985)年7月 平成15(2003)年6月 構 造 鉄骨鉄筋コンクリート造、1階・2階部分 (麻生市民館との合築) 鉄筋コンクリート造・1階部分 (柿生小学校内) 延床面積 1,346u 2階=開架(一般書・児童書コーナー)、 対面朗読室、 *閲覧席(一般)48席、(児童)16席 1階=参考図書室、集会室、作業室、書庫 *閲覧席10席 391u 1 階 一般・児童図書室、作業室 *閲覧席44席 開館時間 月曜〜金曜 9:30〜19:00 土曜・日曜・祝休日 9:30〜17:00 月曜〜金曜 10:00〜18:00 土曜・日曜・祝休日 10:00〜17:00 休館日 毎月第3月曜日(祝休日にあたる場合は開館し、その翌日を休館とする)・年末年始・蔵書点検・その他 職員数 市職員 正規職員7 名(うち司書6 名) 非常勤嘱託職員(2 名うち司書1名) 委託職員 16 名 市職員 正規職員2 名(うち司書1 名) 非常勤嘱託職員4 名(うち司書1 名) 蔵書数 210,575冊 (内、児童図書60,723冊) 開架冊数=139,623冊 41,305冊 (内、児童図書19,385冊) 開架冊数=41,305冊 貸出冊数 849,201冊(うち児童書288,759冊) 95,548冊(うち児童書44,335人) 貸出人数 368,272(うち児童生徒46,773人) 38,962(うち児童生徒8,662人) 登録者数 49,941人(うち児童生徒6,427人) 3,377人(うち児童生徒1,228人) 利用人数 22,709人(うち児童生徒3,390人) 1,551人(うち児童生徒616人) 予約冊数 一般書 179,423冊 児童書 53,267冊 雑 誌 13,652冊 視聴覚 8,405点 計 257,747点 相互貸借 1,144冊 一般書 18,391冊 児童書 7,410冊 雑 誌 2,386冊 視聴覚 828点 計 29,035点 相互貸借 158冊 (資料:「平成31年度活動報告書」) ○麻生区の図書館2館に共通する特筆すべき点として、10時〜11時が最も利用される時間帯で、開館後の早いタイミングに賑わいがある図書館という点が挙げられます。 〇麻生図書館は、駅近の敷地に、市民館との複合施設として設置しており、市内でも利用の多い図書館です。利用者は元気な高齢者が多く、専門的なレファレンスや資料のリクエストが多数寄せられます。リタイア後も調査・研究をライフワークにしておられる方が目立ちます。週末は、子連れのファミリーで賑わいます。 〇柿生分館は小学校の敷地内にあり、全国的にも珍しい学校図書室と併設された図書館分館です。入り口は別に設けられていますが、館内は柿生小学校図書室と一体で、小学校の中休みには小学生が学校側から入って利用できるようになっています。平日の利用は、ほぼ地域の高齢者、就学前のお子さんを連れた方、小学生で占められています。週末にはサラリーマン層の利用もありますが、メインは高齢者と子連れのファミリーです。 巻末資料(1) 平成30年度・令和元年度審議経過 年月日 会議名 会場 主な内容 平成30年 6月13日 平成30年度 第1回専門部会 中原区役所 501 会議室 1 委嘱状伝達 2 部会長・副部会長選任 3 専門部会の職務説明 4 川崎市立図書館の現状について 5 今期専門部会の進め方について 平成30年 10月17日 第2回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 図書館専門部会の進め方について 平成30年 12月12日 第3回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 「鷺沼駅周辺再整備」について 3 図書館専門部会の進め方について 平成31年 3月 8日 第4回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 「鷺沼駅周辺再整備」について 3 乳幼児から小学生の読書推進と図書館 サービスのあり方 令和元年 6月 7日 令和元年度 第1回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 「鷺沼駅周辺再整備」について 3 ティーンエイジャーと読書 令和元年 9月13日 第2回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 「鷺沼駅周辺再整備」について 3 今後の市民館・図書館のあり方について 4 ティーンエイジャーへの読書支援と 図書館 令和元年 12月20日 第3回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 地域ニーズと各館サービス 3 「鷺沼駅周辺再整備」について 令和2年 2月19日 第4回専門部会 中原図書館 多目的室 1 報告事項 2 今後の市民館・図書館のあり方について 3 新しい宮前市民館・図書館に関する基本的 な考え方について 4 平成30・令和元年度の研究活動報告書に ついて 5 活動の総括 巻末資料(2) 平成30年度・令和元年度川崎市社会教育委員会議図書館専門部会委員名簿 (五十音順) 氏 名役職名備考 青 柳 英 治◎ 明治大学文学部教授 大 津 裕 一川崎市立枡形中学校長 平成31年4月 24日から委嘱 鈴 木 穆川崎市総合文化団体連合会 千 錫 烈 関東学院大学社会学部 現代社会学科准教授 田 中 真理子川崎市立宮崎中学校長 平成31年4月 30日まで 西 田 展 子川崎市PTA連絡協議会副会長 平 木 薫川崎市立宮前平小学校長 吉 田 武 ○ 川崎郷土研究会長 吉 葉 清 子市民委員 渡 部 康 夫市民委員 渡 邊 由紀江 柿生小学校/麻生図書館読み聞か せボランティア ◎部会長 ○副部会長 [ 任 期 ]平成30年5月1日〜令和2年4月30日 平成30年度・令和元年度 川崎市社会教育委員会議図書館専門部会研究活動報告書 『図書館における読書推進の現状と課題』 〜読書のまち・かわさき 子ども読書活動推進計画(第3次)を踏まえて〜 令和2年(2020年)3月31日 編集 川崎市社会教育委員会議図書館専門部会 発行 川崎市立図書館(中原図書館) 電話 044−722−4932